【事例】妻と養子に相続させたくない【推定相続人廃除の難しさ】

たとえ、相続人に問題があり、遺言で「相続させない」としても
相続人(兄弟姉妹以外)には遺留分があるため、完全に相続させないためには
推定相続人の廃除の申立をする必要があります。

【民法第892条】
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。
以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱
加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、
被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

【民法第893条】
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、
その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に
請求しなければならない。
この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時に
さかのぼってその効力を生ずる。

ただし、推定相続人の廃除は、法定相続権を失わせるもので慎重に判断されます。
そのため、推定相続人の廃除は簡単には認められません

今回は、相続人廃除の遺言をしたが、認められなかった事例をもとに
なぜ認められなかったのか、事前にどのようにしていれば認められる可能性が
生まれたのかを解説していきます。

概要

時系列

審判

推定相続人廃除の申立を却下する。

【理由①】HのZへの暴力について

HのZを介護した期間は、10年近くあったことと、Zが不満の多い性格であったことから、
Hの行為は、虐待重大な侮辱該当すると認めることはできない

【理由②】Hの銀行預金の引き出しについて

HはZの遺言書の存在を知らなかったため、Zの妻である自分がZの銀行口座から
預金を引き出すことに問題があると考えなかったと認められるので、多額の預金を
引き出した事実があったとしても、それをもって著しい非行とは認められない

【理由③】Iの推定相続人の廃除について

Iには、Hのように暴力などの具体的な廃除事由がない
廃除事由各相続人毎判断されるべきであるから、Hと一体として
廃除されるべきという主張は認められない。

その他の判例

【推定相続人の廃除が認められた判例】

  • 大阪高等裁判所 昭和37年5月11日
    夫の暴行(殴打による顔面創傷、腹部を蹴ったことによる流産など)と
    義父母・義妹との折り合いが悪い事例で、妻の遺言で夫に対しての廃除請求が認められた。
  • 東京家庭裁判所 昭和42年6月30日
    些細なことで家族に当たり散らしたり、金銭を強要することがあり、
    就職先で金品を横領親に弁償させるなどした子に対しての廃除請求が認められた。

【推定相続人の廃除が認められなかった判例】

  • 大阪高等裁判所 昭和27年12月9日
    詐欺恐喝罪で有罪となった子に対し廃除請求をしたが、財産の無駄づかいや
    家庭内秩序の乱れの恐れなど、将来の行動の心配だけでは廃除事由に当たらないとした。
  • 旭川家庭裁判所 昭和43年4月23日
    子が父に頭を柱に打ちつけたり、首を締め上げたりする暴行があったが、
    これは父母の長年の不仲が底流にあり、母を擁護しようとする子の一時的な
    感情の爆破とみるべきだとして子に対しての廃除請求を否定した。

まとめ

今回紹介した事例では、Hの婚姻がZの財産狙いであり、Iの養子縁組も
その目的達成のための補強手段として勝手に行った可能性が考えられました
しかし、ZはHとの離婚・Iとの離縁の申立てを取り下げるなど対応中途半端だったことと
婚姻後の大半の期間をH・Iと同居しており、外部から日常生活の実態を立証することが
困難なため(病院の記録にあるHへの不満はZの特異な性格によるものではと判断され)、
推定相続人の廃除は認められませんでした。

ですので、今回のような場合は、生前からZが別居をするなど離婚・離縁の意思を表し、
遺言書を作成したこと銀行やHに知らせ預金の引き出しを阻止していれば、
違う結果になったかもしれません。

また、今回は推定相続人の廃除請求をする側の事例をご紹介しましたが、
相続人同士が不仲で、一方が被相続人を囲い込み、もう一方の相続人に対して
推定相続人の廃除するといった内容の遺言書を作成させるような事例もあります。

このような場合には、推定相続人の廃除取り消しの請求や遺留分減殺請求、
遺言無効確認調停・訴訟を申し立てるなどしなくてはなりません。

推定相続人の廃除、遺留分などでお困りでしたら、
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。

特に、虐待などによる推定相続人の廃除請求には、虐待の証拠となる病院や警察の記録が
必要になることが多くなるのですが、記録は個人情報のため回答をもらえない場合があります。
その様な場合に弁護士にご依頼いただくと弁護士会照会制度を利用した証拠収集をすることが
可能になります。

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