前回のコラムでは、特別縁故者への財産分与制度とその流れをご紹介しました。
今回は、当事務所で扱った特別縁故者への財産分与の事案をご紹介し、具体的にどのような事情があれば(主張をすれば)、特別縁故者として財産分与の対象者となれるのかを各事案ごとに記事を分けてご紹介します。
今回は、被相続人の甥姪の子(兄弟姉妹の孫)に対して相続財産の100%を分与された事案をご紹介します。
被相続人との関係
被相続人Zは未婚で、子供もおらず、相続人(代襲相続人)となる両親、兄弟姉妹及び甥姪もZが亡くなるよりも先に亡くなっていたため、Zには相続人がいない状態になっていました。
Zの姉の孫である依頼者Aは、Zの生前から身の回りの世話をしていました。そのため、Zの財産は、Aの協力と寄与によって維持形成されたものと考えられました。このような事情から、Zの遺産については、Zと特別縁故関係にあるAに分与されるべきだと判断し、裁判所に相続財産管理人(現:相続財産清算人)選任の申立と、特別縁故者への相続財産分与の申立(公告期限満了後)を行いました。
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特別縁故者として主張した具体的事情
被相続人の療養看護について
主に以下の3点から、AがZの療養看護とその関連手続きを一貫して1人で行っていたと主張しました。
- Zの医療アセスメント(患者の状態や評価)から、Zが自力で生活するのは困難であったこと
- 介護施設のサービス提供記録から、Aが日頃からZのもとに訪問し、
介護サービス担当者と綿密な打ち合わせを何度もしていること - 診療記録に「Aを一番頼りにしている」と記載があること
郵便物の管理と各種支払い手続きについて
AはZのもとに届いていた郵便物の管理と郵便で届いた各種支払請求への対応を行っていました。その根拠として、警備会社が行っている不在住宅の見回り・郵便物回収サービスの契約書を提出し、回収した郵便物の転送先がAの住所であることから、郵便物の管理と各種支払い手続きをしていたことを主張しました。
身元保証人と各種契約に関する手続きについて
AはZの身元保証人として、入院契約をはじめとする各種契約の手続きをしていたことを主張しました。
被相続人の葬儀について
Zは生前にAに対して、
- Aに葬式を執り行ってもらいたい
- 指定の寺院から戒名をもらいたい
ことを伝えており、AはZの遺志に従い、喪主として葬儀を執り行い、指定の寺院から戒名をいただくことができたことを主張しました。
相続財産の価値保全について
- AはZの生前から相続財産管理人選任の申立まで、植栽剪定工事をZに代わって依頼し立会を行っていたこと
- Zが貸している土地の借り主の氏名、住所、連絡先をAが知っていること
- Zの入院中や死亡後も、Zの自宅の換気等の管理を行っていたこと
などから、Zの住環境を維持及び近隣住民への配慮、相続財産の価値保全ができ、相続財産管理人への引き継ぎが円滑に進むように協力したことを主張しました。
立替金・未払金について
AはZが亡くなった後に、Zの未払金や債務について約14万円を立替えていました。
立替ができたのは、AがZの未払金や債務を把握し、療養看護や財産管理に努めてきたこと、特別縁故者としての努めを果たしてきたことの裏付けであることを主張しました。
順当な相続人について
AがZの身の回りの世話を開始した当初は、Zの姪(Aの母)が存命だったため、Zは自分が亡くなっても、自分の遺産は姪(Aの母)が相続し、最終的にはAのもとに遺産がいくものと考えていたようでした。
しかし、不運にもZよりも姪(Aの母)が先に亡くなってしまったことによって、Aが全て相続できないというのは不条理なのではないかというのがAとしての一般の方の素朴な感情としてあることも合わせて伝えました。
特別縁故者への財産分与の申立の結果
上記の主張をした結果、相続財産管理人から「Aに対し、相続財産から相続財産管理人の報酬その他管理費用を控除した残余財産全部を分与する。」とするのが相当であるとの意見が出され、Aは無事にZの相続財産の100%を受け取ることができました。
まとめ
今回ご紹介したように、特別縁故者への財産分与を成功させるためには、被相続人との関係や具体的な貢献内容を明確に証明することが重要です。特に、療養看護、財産管理、各種手続きの代行など、日常的な支援の証拠を詳細に提示することが有効です。また、被相続人の意思を尊重し、葬儀など最後まで誠実に対応することも評価されます。さらに、相続財産の維持管理に努めることも、特別縁故者としての適格性を示す重要な要素となります。特別縁故者への財産分与でお困りの方は、初回相談料は無料になっておりますので、お気軽に当事務所までご相談ください。