特別受益の持ち戻しは不公平を是正するために行われますが、
一方で、生前に面倒を見てくれたお礼としての贈与や、
家業を継ぐ者への贈与など、被相続人が他の相続人よりも
多く財産を譲りたいとして贈与した分までも持ち戻すと、
被相続人の意思とは異なる結果の遺産分割となる場合があります。
そこで、被相続人は特別受益の持ち戻しを
しなくていい(免除する)という意思表示することができます。
持ち戻しの免除の意思表示があれば、遺留分を侵害しない限り、持ち戻しは免除されます。
ここでは、特別受益の持ち戻しの免除について、
さらに詳しく解説していきます。
持ち戻しの免除の意思表示
持ち戻しの意思表示は2通りあります。
①明示の意思表示
最も一般的な方法として、遺言書に記載する方法があります。
口頭で伝える方法でも明示の意思表示となりますが、
証拠が残らないので、遺言書でなくてもメモなど、
書面にしておくことをおすすめします。
②黙示の意思表示
明示の意思表示が無くても、様々な事情を考慮して、
特別受益者が、他の相続人よりも多くの
利益を得られる合理的な理由があれば、
持ち戻し免除の黙示の意思表示があったと認められます。
遺言書を作成している人の割合が1~2割程度と言われている現在では、
明示の意思表示がされることがあまりないので、
特別受益に持ち戻し免除の黙示の意思表示があったのかを
争う相続トラブルが発生しやすくなっています。
判例:持ち戻し免除の黙示の意思表示が認められたもの
- 農業を継ぐ相続人への田畑、山林などの贈与
(福岡高等裁判所 昭和45年7月31日) - 被相続人の土地に家屋を新築して、その家屋に被相続人と同居し、
面倒を見ていた場合の無償としていた土地の使用料
(東京家庭裁判所 昭和49年3月25日)
婚姻期間20年以上の配偶者への住居などの贈与(民法改正:平成30年7月13日公布)
民法の改正によって、婚姻期間が20年以上である夫婦の一方の配偶者が、
他方の配偶者に住居などを贈与・遺贈した場合は持ち戻しの免除が
あったものと推定することになります。
詳しくは、法務省の
【民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)】
をご覧ください。
まとめ
特別受益の持ち戻しの免除の意思表示があったと認められるのか
認められないのかは、相続トラブルの1つとなっています。
黙示の意思表示があったと認められるには、
様々な事情を考慮することが必要で、複雑になります。
特別受益の持ち戻し免除の意思表示について相続トラブルが発生しているなどありましたら、
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。