被相続人Zの相続について、Zの子どものAとBが対立していました。
【Aの主張】
Zの遺言書には、
『Bの子ども(Zの孫)とBの配偶者への遺贈』が含まれており、
このとおりに遺産分割を行うと、私の遺留分が侵害されてしまう。
【Bの主張】
AはZと共同でマンションを購入したが、その購入費用として
Zから生前贈与を受けており、これが特別受益に該当する。
そのため、Aの遺留分は侵害していない。
ZからAへの特別受益の有無が争点となり、結果、
裁判所から、マンションの購入費用の生前贈与が
特別受益として認められたといえる和解案が提示されました。
では、どのように主張して、マンションの購入費用が特別受益として認められたのでしょうか。
ひとつずつ確認していきましょう。
共同購入したマンションについて
売買代金:5,000万円
Zの持分(所有権):40%
Aの持分(所有権):60%
このことから、所有権分のとおりにマンションの購入費用を負担すれば、
それぞれ、以下の金額を支払ったと考えられます。
Zの所有権分の購入費用:2,000万円(=5,000万円×40%)
Aの所有権分の購入費用:3,000万円(=5,000万円×60%)
※:金額については、分かりやすくするため大よその金額で記載しています。
特別受益の立証①【Zの日記など】
Zが残したメモに
「マンションの購入は、単身であるAの将来を想い購入した。
従って、共有持ち分を、Zが40%、Aが60%として登記した。
そこのことは、Aが承知していると思うが、私(Z)が3,500万円を
準備した日記をマンション管理関係書類に同封する。」と書かれていました。
また、Zの日記には、積み立てた資金と日付が書かれていて、
最終的に、3,500万円を用意しているという内容となっていました。
Zがマンションの購入時に3,500万円を支払っているのであれば、
Zのマンション所有権分の金額との差額
(3,500万円-2,000万円=)【1,500万円を生前贈与】されたと考えられます。
特別受益の立証②【ZとAのマンション購入資金についての相談メモ】
マンション購入資金についての相談メモに、Aの筆跡で
○○銀行 600万円
△△銀行 900万円
と書かれていました。
このことからAがマンション購入のために用意できた金額が
(600万円+900万円=)1,500万円と分析すると、
Aのマンション所有権分の金額3,000万円には
(1,500万円-3,000万円=)【1,500万円不足】しています。
不足分の金額と、生前贈与されたと考えられる金額とで①の内容と整合します。
特別受益の立証③【Aの給与水準・勤続年数】
Aの勤めている会社の給与水準と勤続年数では
3,000万円の貯蓄ができたとは考えられない。
まとめ
被相続人からの資金提供があったことについて、
銀行の取引明細や通帳などの客観的証拠がなかったにもかかわらず、
被相続人が残したメモなどの証拠を丁寧に主張立証することで、特別受益として認められました。
特別受益を主張するには、確実な証拠・丁寧な立証が必要です。
相続について、お困りのことがございましたら
当事務所では初回相談料を無料とさせていただいていますので、お気軽にご相談ください。